難病法

難病対策とSPSについて

1、初めての方へ

難病と言われ大変混乱し、何から情報を得たら良いのか分からない状況では無いかと思います。何故私が?等思い悩んでいませんか?

出来るだけわかりやすく、表現しながら難病の対策について、時系列でお話ししていきたいと思います。

大部分が難病センターや厚生労働省関連部署やAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)に載っている資料なのですが、膨大で難解な表現が多く、一般向けでも疑問が多いことが多いです。また肝心のSPSについては余りにも資料が少ないように感じると思います。引用部分については変更することができませんのでそのままのせてあります。わからない表現や部分がありましたら遠慮なくコメント欄にご記入ください。

2、難病の始まり

昭和40年代整腸剤キノホルム薬剤によるスモンという視神経と脊髄炎を合併する病気の疫学調査研究結果に始まりました。このことをきっかけに、

難病と言われる病気でも集中的かつ多角的に研究を行えば、その原因が解明されるかもしれないという流れの中昭和47年に難病対策要綱が策定されました。この要綱の中において、難病は、1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病、2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に等しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病、と定義されました。また、難病に対する対策の進め方としては、1)調査研究の推進、2)医療施設の整備、3)医療費の自己負担の解消、の3つが挙げられ、難病の病因・病態の解明研究及び診療整備のみならず、医療費公費負担が初めて目指されることとなったのです。

しかし、研究費や対象疾患が少なすぎることで十分な研究・新薬開発が進まなかった事は否めませんでした。しかしながら医学の進歩は進み遺伝子研究、分子量の計測等ノーベル賞を多くの日本人が受け取られたことは周知の事と思います。そのような中で、外国で生理学的な研究で、難病研究をされている日本人の方々も沢山いらっしゃいます。(翻訳のご指導をお願いしたら快く引き受けて頂けた米国在住の先生と関わりを持てるようになり、研究者の有難味を感じています。)

3、やっと訪れた難病対策の進歩

図1

その後平成23年以降集中的な難病対策の改革に関する審議がすすめられ(図1)平成23年度末の時点では対象患者数は78万人にまで増加しました。図1の中で、パーキンソン病は知名度も高いです。1位の潰瘍性大腸炎で現役の総理大臣が途中辞任される事態に陥ったことも皆さんご承知の事と思われます。難病は誰にでも起こりうる疾患であるということです。

4、難病の定義

図2

平成26年5月23日難病の患者に対する医療等に関する法律成立<平成27年1月1日施行>この法律の中で医療費助成となる疾患は新たに指定難病と呼ばれることとなりました。難病は、1)発症の機序が明らかでない。2)治療方法が確立していない。3)希少な疾患である。4)長期の療養を必要とする難病であって、5)患者数が本邦において一定の人数(人口の0.1%程度)に達しない事。6)客観的な診断基準(またはそれに準じるもの)が成立していること、という5)6)の2条件が加わっています(図2)。指定難病の選定にあたっては、厚生労働省指定難病検討委員会において上記の要件を満たし、なおかつ重症度分類あるものについて討議しさらにパブリックコメントを求めた後、厚生科学審議会疾病対策部会で承認するプロセスが取られました。第1次実施分として110疾病が選定され、平成27年1月1日から医療費助成が開始されています。さらに5月13日には第2次実施分196疾病が決まり、」合計306疾病が対象となることになり、これら追加分と合わせて平成27年7月1日から医療費助成が開始されることとなっています。重症度分類で重症度が認められると指定難病の手帳が交付されることとなります。本会のアンケート分類に入った項目の中から得られると思われます。どの項目が選定されたとしても、本会のホームページアンケート結果からその重症度実態は広く社会へ伝わると願っています。

5、平成27年3月19日厚生科学審議会疾病対策部会指定難病部会 

本委員会では615の疾病を検討の対象とし、そのうち225疾病について指定難病要件の各要件を満たすと判断した。さらにこれらの疾病について類似する疾病などの再整理を行い、196疾病を指定難病(第二次分)とすべきことを本委員会の結論とし、個々の疾病の支給認定に係る基準を整理され、5疾病が外れました。これらをクリアすることが重要です。この時点で我々と同様な症状を呈するが末梢神経の異常で起こるアイザックス症候群が入りました。未だこの時点ではスティッフパーソンは入れませんでした。

6、難病の研究体制

これまで難病の研究体制は厚生労働省がつかさどってきました。難病に対する効果的な治療方法の開発と診療の質の向上を担保するための事業としては難治性疾患政策研究事業と難治性疾患実用化研究事業の二つが行われてきました。
 難治性疾患政策研究事業では難病患者の疫学的調査に基づいた実態把握、客観的診断基準・重症度分類の確立、エビデンスに基づいた診療ガイドライン等の確立、診断基準:重症度分類・診療ガイドライン等の普及及び改訂などを行い、難病医療水準の向上を図ることを目的としています。
 難治性疾患実用化研究事業については日本医療研究開発機構が行う9つの推進分野(プロジェクト)の中の1つである難病克服プロジェクトが行われることとなっています。遺伝子治療及び医薬品・医療機器等の医療技術の実用化を目指した臨床研究、医師主導治験等の整備(新規治療法の開発・既存薬剤の適応拡大等)が行われます。このほか「難病克服プロジェクト」の中では疾病特有iPS細胞を樹立、分化誘導、解析する技術を有する拠点の整備や創薬支援ネットワークを用いた創薬開発研究等を行うことを目指しています。
平成27年度からは前者の事業は厚生労働省が、後者の事業は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が担当することとなりました。
今年度の申請研究は10倍を超えていたそうです。研究者の熱意を感じます。それぞれの研究事業の課題一覧などは難病センターホームページで見ることができます。

7、指定難病のメリット

指定難病となると研究・新薬開発・治験が進み、経済的にも介護の負担も軽減されます。障がい者手帳を持っていなくても、障がい者総合支援サービスの対象疾患にもなるということです。

8、指定難病になるには何が必要なのかでしょう?

我々SPSも現在(研究対象)難病と位置付けられていますが、難病と指定難病との大きな違いはと、上記に記された本邦(日本国内で)で一定数未満(12.7万人)であるという客観的データと客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が必要ということになります。
これは、大規模な疫学的研究や、関連学会の一定の見解がまとめられなければなりません(現在徳島大学のSPS研究班が中心になって疫学調査実施しています。重症度分類は千葉大学になっています)。本会ができることは、自分たちの実態をみて頂く事、現状を出来るだけ多くの会員の情報として発信すること、他ありません。

9、第15回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会報告

審議会の傍聴を体験してきました。指定難病の条件をクリアしていることの報告と、審議委員からの質問や訂正等があり、その日は9つの小児科(先天的疾患)が主に審議され、修正点は次回以降に研究班と協議のうえ調整され、厚生労働大臣の指定を受けることとなります。この日に、参考資料として配られた指定難病(平成29年度実施分)として指定難病検討委員会で検討を行う疾病(一覧)222疾病の中にスティッフパーソン症候群が記載されていました。
 指定難病の要件について述べてきましたが、今回は若干の変更箇所がありました。
「患者数が本邦において一定の人数に達しないこと」についてでは、
○「一定の人数」として規定している「おおむね人口の千分の一(0.1%)程度に相当する数」について、以下のように整理する。
1、本検討会で議論を行う時点で入手可能な直近の情報に基づいて、計算する。
※本邦の人口は約1.27億人、その0.1%は約12.7万人(「人口推計」(平成26年1月確定値)(総務省統計局)から)
2、当面の間は、0.15%未満を目安とすることとし、具体的には患者数が18万人(0.142%)未満であった場合には「0.1%程度以下」に該当するものとする。
3、この基準の適用に当たっては、上記を参考にしつつ、個別具体的に判断を行うものとする。
4、この基準の適応に当たっては上記を参照にしつつ、個別具体的に判断を行うものとする。

○患者数の取り扱いについては以下の通りに整理する。
①希少難病の患者数をより正確に把握するためには、(a)一定の診断基準に基づいて診断された当該疾患の(b)全国規模の(c)全数調査という3つの要件を満たす調査が望ましいものとする。

もう一つ「診断に関して客観的な指標による一定の基準が定まっていること」について
○以下のように整理する。
①血液検査の検体、画像検査、遺伝解析検査、生理学的検査、病理検査等の結果とともに、視診、聴診、打診、触診等の理学所見も、客観的な指標とする。
②「一定の基準」とは以下に該当するものとする。
 ⅰ. 関連学会(国際的な専門家の会合を含む。)による承認を受けた基準や既に国際的に使用されている基準など、専門家間で一定の合意が得られているもの。
 ⅱ. ⅰには該当しないものの、専門家の間で一定の共通認識があり、客観的な指標により診断されることが明らかでないもので、ⅰの合意を得ることを目標としているなどⅰに相当とすると認められるもの。この場合関連学会等の取りまとめ状況を適宜把握する。

10、難病情報センター|平成28年度 難治性疾患政策研究事業 研究課題一覧表の中で

領域別の基盤研究には
「エビデンス1に基づいた神経免疫疾患の早期診断基準・重症度分類・治療アルゴリズム2の確立」
  金沢医科大学医学部教授 松井 真先生
「自己免疫疾患に関する調査研究」
  筑波大学医療系内科教授 住田 孝之先生

が出てらしゃいました。
1:エビデンスとは医学(科学的)根拠のことを指し、2:治療手段の方策(こういった場合にはこのような対処といった意味合いと思われます。)
横断的政策研究分野には
「患者団体が主体的に運用する疾患横断的な患者レジストリのデータ収集・分析による難病患者のQOL3評価基準の策定及び基礎知見の収集」
特定非営利活動法人ASrid希少難治性疾患研究部 
シニアプロジェクトメンバー 荻島 創一先生
「難病患者の福祉サービス活用によるADL向上に関する研究」
  国立障がい者リハビリテーションセンター臨床研究開発部 
部長 深津 玲子先生

が概ね関連性のある研究をされていると思われます。(222疾患を含めた難病者全体なのか?指定難病に限定されているのか、詳細は不明です。)
スティッフパーソンみんなの会が難病センターの患者会登録になり、アンケート調査の対象になれば更に活動の効果は発揮されることと思います。重症度分類はある程度自己免疫疾患については近いうちに決まると思われます。他の先生方の研究内容や範囲がわかってくるとより、指定化は診断基準のみに限定されてくると思われます。
横断的政策分野研究には日常生活支援やQOL(生活の質)向上や難病患者の福祉サービス活用におけるADL向上に関する研究には、我々が抱える、ADL(日常生活活動)や必要とされる資源を訴えることができるのではないかと考えます。(但し、どの範囲の調査研究になるのかが未だ詳細不明です。

参照文献

11、2021年現在の指定難病

2021年度現在の指定難病は333疾病となり、SPSも2018年(平成30年)から診断基準の確定した疾病に格上げされ、疫学調査結果を待つのみです。これにより、身体障害者手帳を取得すれば身体障害者総合支援法の範囲の中で各種在宅サービスや施設入所サービスを受けることができる様になりました。
 診断基準につきましては、【スティッフパーソン症候群とは、、、】や患者会パンフレットに載せてあります。